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購買検討期間が長いプロダクトに顕在層だけで対応できるのか?

2024.08.01

2024.08.01

こんな人におすすめ

  • 購買検討期間の長いソリューションを扱っている
  • 高価格なサービスのマーケティング戦略を行なっている
  • 従来のプロモーションに限界を感じている

BtoB市場において、衝動買いというのはほとんど見ることができません。それは、企業が商品やサービスを購入する際、通常は何らかの課題解決や目的を達成するために購入し、そこには多方面からの責任が発生するからです。そのため、特に購買検討期間が長いプロダクトを販売する場合には、顕在層だけを狙ったプロモーションを行っていると、多くの販売が望めず直ぐに販売の限界を迎えてしまいます。

購買検討期間によるマーケティング手法の変化

まず、購買検討期間はソリューションの特性や価格によって大きく異なります。例えば、低価格の商品であれば、短期的な購買が行われることが多くなります。しかし、価格が高くなればなるほど、企業は投資回収のリスクを考慮し、検討期間が長くなります。特にIT関連のソリューションや高額な設備投資などは、数ヶ月から数年にわたる検討期間が必要となることが一般的です。

また、保守切れなどのタイミングで切替需要が発生するプロダクトも存在します。これらのプロダクトの場合、企業は予め切替時期を見越して計画的に検討を進めるため、急なプロモーションで即時購買に結びつけることは難しいでしょう。

低価格な商材であれば、顕在層だけを狙ったプロモーションでも売上を伸ばすことが可能です。しかし、高単価製品になると、この戦略は困難を極めます。まず、対象となる企業の数が限られているため、大規模なマーケティング活動はコストパフォーマンスが悪くなります。また、購買検討期間が長くなると、企業が売りたいと思っても、顧客の買うタイミングがまだ先になるため、買うタイミングになるまでに、企業間の関係性を深めていくことが重要になります。その為、単なる広告ではなく、信頼関係を築き上げるための継続的なコミュニケーションが求められるのです。

リードナーチャリングの重要性

このような背景から、購買検討期間の長いソリューションを扱っている場合には、リード獲得数よりもターゲットリードの獲得数が重要視されます。

購買検討プロセスの早い段階で、購入意欲の高い企業や将来的にニーズが生まれる可能性のある企業との接点を獲得し、関係構築していくことが重視されます。このため、マーケティング活動においては、見込み客の育成(リードナーチャリング)が重要なポイントになります。

実際、何年も検討を重ねている企業が、購入間近になって広告に影響されることは少ないでしょう。購買プロセスの最終段階においては、すでに候補先の選定が終わっていることが多いのです。そのため、長期間にわたって信頼関係を築き、適切なタイミングで情報提供を行うことが重要なのです。

購買検討期間が長いということは、企業が情報を収集し、評価し、比較し、最終的に選定するプロセスが複雑で時間がかかることを意味します。このプロセスにおいて、初期段階で認知され、適切な情報提供を行うことができれば、企業が最終的な選定を行う際に声をかけてもらえる可能性が高まります。具体的には、ホワイトペーパーやウェビナー、ケーススタディなどを通じて、企業のニーズに応じた価値ある情報を提供することが求められます。

さらに、中長期的なコミュニケーション戦略も重要です。例えば、定期的なニュースレターや業界動向に関するブログ記事を配信することで、企業との接点を維持し続けることができます。また、イベントやセミナーに参加することで、直接的な対話の機会を増やし、信頼関係を深めることも効果的です。

インサイドセールスの活用

そして、ナーチャリングの重要性を考える際、インサイドセールスの役割は欠かせません。特に購買検討期間が長いプロダクトの場合、継続的なフォローアップが不可欠であり、インサイドセールスはその中核を担います。

インサイドセールスは、見込み客との関係を深めるために重要な役割を果たします。基本的な機能として、定期的な連絡を通じて見込み客のニーズや課題を把握し、それに対する適切な情報提供を行います。例えば、新しい製品情報や業界動向、成功事例などを共有することで、見込み客にとって有益な情報を提供し続けます。こうした接点の中で詳細な顧客情報の収集ができるようになると、営業へのトス段階で、営業にとって有益な情報を付加した上でつなぐことが出来るため、商談品質や効率も向上することになります。

インサイドセールスはデータに基づいたアプローチを取ることができるという強みもあります。CRMシステムやマーケティングオートメーションツールを活用することで、見込み客の行動や反応をトラッキングし、最適なタイミングでパーソナライズされたコミュニケーションを行うことも可能です。

このように、インサイドセールスはナーチャリングの一環として非常に重要な役割を果たします。継続的なコミュニケーションを通じて見込み客との関係を深め、購買意欲を高めることで、最終的な商談成立に結びつけることができるのです。

選ばれる存在となるために

このように、購買検討期間が長いソリューションの販売においては、顕在層へのアプローチだけでは不十分です。潜在層へのアプローチによってターゲットリードを獲得し、リードナーチャリングを通じて中長期的な関係を築くことが不可欠なのです。

企業の購買プロセスを深く理解し、適切なタイミングで顧客にとって価値ある情報を提供することで、最終的な購買選定において優位に立つことができるでしょう。

購買検討期間が長いソリューションの販売においては、顕在層だけで対応する戦略は限界があり、潜在層へのアプローチや中長期的なリードナーチャリングが重要となります。

対象企業との信頼関係を築き、適切な情報提供を通じて、最終的な購買選定において選ばれる存在となるための取り組みが求められるのです。

この記事を書いた人

安川 俊大株式会社エムエム総研

エムエム総研のカスタマーエクスペリエンスDivのDivision Managerとして、BtoBマーケティングに特化したサービスを提供。前職のSIerでは事業責任者、営業・マーケティングを統括し、セールステック領域のビジネス拡大に貢献。また、SaaSベンダーでは、SFAの導入コンサルタントとして多くの企業のSFA導入と運用支援に携わり、営業プロセスの構築をサポートした実績多数。

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