Column

DMU (Decision Making Unit)の洗い出しと整理が、より効果的な営業・マーケティング活動につながる

2024.08.01

2024.08.01

こんな人におすすめ

  • ペルソナやカスタマージャーニーの設計や見直しを検討している
  • 新規市場開拓や新プロダクトのリリースを控えている

いま、多くの企業でBtoBマーケティングの高度化や効率化への取り組みが加速しています。インサイドセールスやWebマーケティングに最適化した組織の編成や、ペルソナやカスタマージャーニーの設計といったマーケティングの根幹となる部分の見直しを行なっている企業も少なくありません。しかし、市場に出回っている情報はBtoCに偏っており、BtoBマーケティングに特化した情報やノウハウが少なく、苦労しているマーケターも多いのではないでしょうか?

BtoBとBtoCマーケティングの違いは多々ありますが、その中でも大きな違いが顧客の意思決定プロセスです。ターゲットとなる顧客の意思決定プロセスを正確に把握しなければ、精度の高いBtoBマーケティング戦略を立てることはできません。

このコラムでは、組織の意思決定プロセスに不可欠なDMU(Decision Making Unit)に焦点をあて、DMUが営業やマーケティングにどのような影響を与え、どのように活用できるかを掘り下げて解説します。

DMU (Decision Making Unit)とは何か?

DMU(Decision Making Unit:意思決定ユニット)とは、組織内で重要な購買・契約の意思決定に関与する複数の人々の集団を指します。BtoBビジネスの場合、企業が新しい製品やサービスを導入する際、単独の人物が決定するケースは少なく、通常は複数の人物の意見や利害関係が絡み合って最終的な意思決定が下されます。

そして、DMUの構成メンバーには一般的に次のような役割があります

  • 使用者(User): 製品やサービスを使う人。使いやすさや性能についての意見を提供します。
  • 影響者(Influencer): 専門知識を持つ人。製品・サービスの選定に大きな影響を与えます。例:IT担当者や部門長。
  • 購買者(Buyer): 製品やサービスの購入手続きをする人。価格交渉や契約条件の調整を行います。
  • 決定者(Decider): 最終的に購入の決定する人。通常、経営幹部や事業部長が該当します。
  • 調整者(Gatekeeper): 購買プロセス全体を管理し、情報の流れをコントロールする人。例:アシスタントや調達担当者。

このように、DMUは組織の中で異なる役割を果たす個人から構成され、各メンバーのニーズや意見は組織全体の購買意思決定に反映されています。ここで注意すべき点は、単に上記のような役割に当てはめて考えるのではなく、現実的な役割や影響力を考慮しなければならないということです。

メンバーはそれぞれ「部署」「役職」「役割」などが異なるため、個々の具体的な課題やニーズは異なります。そうした個別事情まで把握することで、顧客の購買意思決定がどのように行われているかがより明確になり、効果的なアプローチが可能になるのです。

例えば、「部署」「役職」が違うことでどのように課題やニーズが変わってくるのでしょうか。

「部署」による違いを、システム導入を例に考えてみましょう。情報システム部門であれば、セキュリティ対策への信頼性や導入作業や運用管理には「どれだけ手間が掛かるか」がポイントかもしれません。一方、ユーザー部門であれば、「システムの使い勝手」や「やりたいことにフィットしているかどうか」などを評価するでしょう。

では、「役職」による違いはどうでしょうか。例えば、経営陣であれば「全体最適」を念頭に検討をするでしょう。部課長クラスになると「全体最適」よりも「部門最適」が優先順位として働く傾向が強く、一般社員になると、自分の業務が楽になるかどうかといったように「自分最適」の視点で考える傾向があります。

また、「役割」についても注意が必要です。「決定者」とはどのような人でしょうか。基本的には最終稟議決裁者となりますが、その人が「決定者」なのかは疑問です。実際には、上がってきた稟議書に対して、基本的に反対の立場を取らずに決裁をするケースもあります。

例えばITシステムを事業部門で導入する場合、事業部門長が「決定者」になるケースがありますが、その「決定者」にITシステムへの知見がない場合は、現場の決定に対して決裁をするだけ、ということになります。その場合、ラベルとしては「決定者」ですが、実質的な「決定者」は別にいると考えるべきでしょう。

筆者もERPの営業をしていた際に、プロジェクトメンバーからの内示を受け、稟議申請でも承認を得られると言われていましたが、利用現場のキーマンを押さえていなかったことで、現場からの猛反対に合い、結論がひっくり返り、失注をしたという苦い経験があります。

このように、DMUの洗い出しを行うだけではなく、その構成メンバーそれぞれのパーソナルな情報までを整理することで、より効果的な営業・マーケティング活動を行うことが可能になります。

DMUの有効性とは

ここまで見てきたように、DMUはBtoBビジネスにおいて、特に一定規模以上の企業に対してアプローチをかける場合、ターゲット企業の意思決定プロセスを理解する上で不可欠なツールです。

特に、トップクラスの営業であれば、DMUだけではなく、個々の担当者に関しての情報も豊富に保有しており、戦略的発想から、効率的な顧客アプローチを行い成果に繋げています。

逆に、DMUを把握せずに行き当たりばったりでアプローチを行っている営業は、思ったように成果に繋がっていないケースが多く見受けられます。

的確なアプローチ先の特定
DMUの構成を理解することで、購入プロセスにおけるキーパーソンを特定しやすくなります。
それによって、的確なアプローチ先の選定が可能になり、効率的かつ効果的なアプローチが可能になります。

適切なコミュニケーション
DMUのメンバーはそれぞれ部署、役職、役割が異なるため、個々の具体的な課題やニーズが違ってくることが通常です。
ここの状況に応じたコミュニケーションを行うことで、より効果的で説得力のある提案を行うことが可能です。

リスク回避:
意思決定プロセスに関与するキーマンを把握し、彼らの反応や懸念を早期に理解して対処することで、
潜在的な反対意見やプロジェクトの脱線を未然に防ぎます。

当然、マーケティング部門でもDMUを理解することは非常に重要なポイントになります。ターゲット企業のDMUを把握し、購買検討プロセスの中のどのフェーズに誰が関与して、どのような情報を、どのチャネルから取得しているのかなど、が整理されていないと適切なコンテンツを適切なタイミングで適切なチャネルから届けることはできません。しかし、実態としてはマーケティング部門がターゲット企業のDMUを理解していないケースが少なくありません。

購買関係者の把握
DMUを理解することで、ターゲット企業の意思決定プロセスに影響を与える各関係者を把握し、彼らの役割やニーズに基づいた 施策の立案、実行が可能になります。

購買プロセスの把握
顧客購買プロセスの洗い出しを行い、DMUにいるメンバーの誰がどこのプロセスに登場するかをプロットすることによって 購買の段階に合わせて、誰にコミュニケーションをとるべきなのかを明確にすることが出来ます。

効率的なコンテンツ開発
購買プロセスと関与者を明確にすることで、抜け漏れがなく、効率的にコンテンツ制作を行うことが出来ます。
また、それぞれ部署、役職、役割に応じたパーソナライズされたメッセージやコンテンツを提供することで関係者の関心を引くことができます。

DMUの役割は、BtoBの購買プロセスにおいて組織の意思決定に重要な影響を与えます。営業やマーケティング活動でその重要性を認識し、構成メンバーのニーズと関心を考慮した効果的なアプローチを行うことで、顧客の意思決定に積極的に影響を与え、ビジネスの成長を加速させることができるのです。

この記事を書いた人

安川 俊大株式会社エムエム総研

エムエム総研のカスタマーエクスペリエンスDivのDivision Managerとして、BtoBマーケティングに特化したサービスを提供。前職のSIerでは事業責任者、営業・マーケティングを統括し、セールステック領域のビジネス拡大に貢献。また、SaaSベンダーでは、SFAの導入コンサルタントとして多くの企業のSFA導入と運用支援に携わり、営業プロセスの構築をサポートした実績多数。

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