Column
ノベルティの役割を考える
- イベント
2025.10.20
2025.10.20
こんな人におすすめ
- ノベルティの選定に悩んでいる
- 調達したノベルティに対して、社内から不評がある
- 戦略的にノベルティを活用したい
「展示会の出展を控え、ノベルティの選定に悩んでいる」
「年度替わりのタイミングで、ノベルティの調達が恒例になっている」
「社内からノベルティに対して不評の声が上がっている」
「そもそもノベルティの選定基準がわからない」
こうしたノベルティに対する課題を抱えるマーケターは少なくありません。
マーケティング施策を円滑に進めるためや、その効果を高めるためなど、BtoBマーケティングにおいてもノベルティを活用するシーンは数多くあります。しかし、BtoCと比較して調達するロット数が少ない割に単価の上限が低いことや、個々の顧客に対する重要度が高いことなど、ノベルティを調達するための条件はBtoC以上に厳しいといった慢性的な障壁があります。
一回の発注で大きなロットが動くBtoCであれば、ノベルティ販社や代理店からの積極的な情報提供も見込めますが、BtoB企業に対する積極的なノベルティの売り込みは少なく、話題性のある新商品の情報を収集するのはマーケターが業務の合間に行なっているのが実情です。
さらに、BtoBマーケティングは少数精鋭で運用している企業が殆どで、マーケティング施策の設計や立案と運用という主となる業務でも多忙なうえ、ノベルティの選定に多くの時間を割くことは現実的ではありません。
では、どのようにノベルティの選定や調達を行なっていけば良いのでしょうか?
戦略的に選定を行うために、目的を明確にする
ノベルティの役割は大きく分けて3つ
BtoBマーケターがノベルティを選定するとき、どのようにしているでしょうか?
多くのマーケターが、ノベルティ販社のポータルを眺め、アイテムのカテゴリーや予算から探しています。いくつかの決まったWebサイトを巡回し、目ぼしいアイテムを探す。ピックアップしたアイテムを一覧にしてマーケティング会議で選考する。こうしたプロセスでノベルティ選定を行なっている組織が大半を占めています。しかし、このようなプロセスでは発言権の強い人の好みに左右されるなど、戦略的なノベルティ選定は行えません。
ノベルティがマーケティングを駆動するためのアイテムある以上、その選定も戦略的であるべきです。戦略的にノベルティを選定するには、まず目的を整理するところから始めるべきです。
ノベルティの役割は大きく分けて次の3つがあります。
- 多くのターゲットに対するアクショントリガー
- ブランド価値やアウェアネスの向上
- 営業が動きやすい状況を作る
調達すべきノベルティの役割を明確にすることで、貰う人や使う人の解像度が上がり、マーケターの主観に左右されず戦略的にノベルティを選定できるようになります。では、それぞれの役割に応じた相応しいノベルティについて考えていきます。
1. 多くのターゲットに対するアクショントリガー
マーケターがノベルティを調達するうえで、最も多いのが多数のターゲットに対してアクションを促すトリガーとしてのノベルティです。
- 展示会で名刺を集める
- カンファレンスでアンケートを集める
- Web施策で登録などの行為を促す
こうした場面でターゲットの行動を促すために活用するノベルティはどのような物であるべきでしょうか。この場合は対象母数が大きいので安価であることはもちろん、「ターゲットにとって、分かりやすい実利に直結するもの」というのが有効です。
例えば、酷暑の夏に開催される展示会なら「冷たい飲料」や「制汗アイテム」であったり、冬季の展示会ならば「保温グッズ」、また荷物が多くなることを見越した「ペーパーバッグ」などです。これは見慣れたノベルティであり、しっかりと目的を説明できないと社内の不評につながる可能性があります。しかし、一度に多くのターゲットの行動を促すには、低い単価で、かつ一瞬で実利を想起できるアイテムは理にかなっているのです。
「ノベルティである以上、ロゴマークくらいは印刷したい」「せっかくだから、もっと気の利いたアイテムを使いたい」といった場合、予算と時間が許すのであればロゴを入れたり目新しいアイテムを探すのも良いですが、「ターゲットがロゴ入りアイテムを目当てに行動するか?」や「一瞬で実利を理解してくれるか?」といった利用する現場やターゲットについて想いを巡らせ、場合によってはロゴ印刷を諦めることも決して間違った判断ではありません。
2. ブランド価値やアウェアネスの向上
ノベルティの活用で次に多いのが、ブランド価値やアウェアネスの向上を目的としたものです。
- 自社や製品に対する認知を高める
- 新製品やリニューアル製品の市場認知を獲得する
- 製品やサービスの市場イメージを刷新する
この場合、前述のトリガーとしてのノベルティとは違い、「印象の蓄積効果が見込めるもの」が求められます。企業や製品のロゴマークはもちろん、キーとなるメッセージやイメージの伝播を後押しすることが求められるため、選定もより慎重に行われる必要があります。当然、検討や調達にかかる時間もコストも多く見積もる必要があります。
ターゲットに印象を蓄積するには、「相応のインパクト」や「ある程度の期間使ってもらえる」といった要件が必要になってきます。この2つを同時に叶えることは難しいですが、少なくともどちらか一つは満たす必要があります。BtoCマーケティングではデザインの幅が広く長く使えるタオルやハンカチなどが根強く活用されています。このような定番アイテムではなく目新しさを求めるのであれば、代理店と協力するなど日々アンテナを張って新しいアイテムを探す必要があります。
3. 営業が動きやすい状況を作る
ノベルティの役割として3つ目が「営業が動きやすい状況を作る」ということです。これは「ブランド価値やアウェアネスの向上」の派生ですが、主となる目的が自社の営業パーソンの活動促進になります。
- 年度替わりや年末年始の挨拶など、顧客関係性の維持と向上
- 既存顧客からの情報収集や満足度調査
こうした活動をより円滑に行うためにもノベルティの活用は効果を発揮します。この場合にノベルティに求められるのは「顧客の満足が得られやすい」ということはもちろん「営業のモチベーションが上がる」といった内向きの効果が求められます。
この場合、前述の「多くのターゲットに対するアクショントリガー」「ブランド価値やアウェアネスの向上」と違い、ノベルティの配布先は既存顧客かそれに準ずる人(ホットリードや過去顧客)になるため母数は一気に下がります。しかし、対象は既に関係性ができているため、マンネリ化の防止などの要件も追加されます。
BtoCにおいてはこのケースでも母数は多いためにタオルやカレンダーといった定番のアイテムが健在ですが、BtoBマーケティングの営業の方がBtoC以上に一人一人の顧客を重要視する傾向が強いため、ノベルティに対する要求レベルは高くなります。そのため、ノベルティの選考プロセスに営業部門を巻き込むなど、営業とマーケの連携体制が良い結果に結びつくでしょう。
このように目的を整理することで、より効果の高いノベルティを効率的に選定することが可能になります。また、貰う人や使う人の解像度が上がり、戦略的にノベルティを選定できるようになります。そして、ロジカルな説明によって社内での選考プロセスも省力化できるのです。
モノから探すのではなく、目的から探すこと
「ノベルティは目的からアプローチする」
このことを習慣化することで、マーケティング活動に多くのメリットがあります。
例えば、予算消化などの目的で実際に使う場面が不明瞭な時点でのノベルティ調達も、今後のマーケティング活動において、「アクショントリガー」「アウェアネスの向上」「営業支援」のどの活動に対して備えるか?を予測することで、効果が高く使いやすいノベルティを準備しておくことができるようになります。
「モノから探すのではなく、目的から探す」
「戦略に基づいた選定と、マーケターの主観を排する社内説明のプロセス」
この2つを意識することで、ノベルティの選定・調達は大きく変わるはずです。