Column

BtoBマーケティングにおける課題と解決策:現場で横行する「施策先行」のプロモーション活動

2024.08.30

2024.08.30

こんな人におすすめ

  • 効果的なプロモーションが行えていない
  • マーケティング組織の成果がリード数に偏っている
  • マーケティング機能がセールス機能の下請けになってしまっている

BtoBマーケティングにおいて、効果的なプロモーション活動を行うためには「誰に、何を、どのように」という基本的な順序に従うことが重要です。しかし、実際の現場ではこの順序が守られず、施策が先行してしまうことが多く見受けられます。

本コラムでは、その背景や問題点について掘り下げ、具体的な成功事例や失敗事例を交えながら改善策を提案します。

BtoBにおけるプロモーション施策検討の手順と問題点

BtoBにおけるプロモーションの施策検討プロセスは、簡略化すると以下のように整理できます。

  • ターゲティング:誰に向けたプロモーション活動かを明確にする。
  • ペルソナ/カスタマージャーニー:ターゲットとなる顧客の具体的な特徴や、購買に至るまでの過程を描く。
  • コンテンツ:ターゲットに伝えるべきメッセージや情報を準備する。
  • コミュニケーションチャネル:適切なチャネルを選び、コンテンツを配信する。

しかし、実際の現場ではこのような基本的なプロセスを経ずに、コミュニケーションチャネルに偏るプロモーションが行われていることがあります。多くの企業で、コミュニケーションチャネルばかりが議論の中心となり、実は「市場理解」「顧客理解」が曖昧な状態にも関わらず、市場やターゲットやペルソナといった「顧客」に焦点が当てられていないのです。そうなると、「現状の市場において、どのような状態の顧客に対し、どのような目的で施策を打つのか」「そこに対してどのようなコンテンツを発信するのか」というプロモーションの核となる部分が話題にされずに施策が行われてしまうことになります。そして、「どこに広告を出すのか」「どのチャネルでリードを獲得するのか?」という話題に終始してしまうのです。そういった企業では、以下のような現象が見られます。

  • ターゲットの不明確さ:顧客理解が曖昧な為、結果としてメッセージが広範囲に散らばりメインターゲットに対して十分な訴求ができずに、強いインパクトを与えることができない
  • 施策の目的不明確:顧客や市場環境を鑑みた上での施策目的の設定がなされず、短期/単発的な施策が横行し、KPIがリード獲得数やCPAに偏っていく
  • コンテンツの質の低下:コンテンツ投資に予算が回らず、質の低いコンテンツが作成されがちです。顧客にとって価値のないコンテンツは、信頼関係の構築に貢献せず、顧客の購買意欲を高めることが難しくなり、結果としてリードの質やコンバージョン率が低下します。

こうした現象は、プロモーション活動の全体を断片的にし、ターゲットに対して一貫したメッセージを届けることを難しくしてしまうのです。

コミュニケーションチャネル偏重の原因

現場でコミュニケーションチャネルばかりが重視される原因として、マーケティングの成果がリード獲得数に偏っている点が挙げられます。
これは、日本のBtoB企業が、長年にわたり営業部門が主導する形でビジネスを展開してきたためです。営業活動が企業の成長を直接的に牽引してきたため、短期的な成果を求められがちです。マーケティングにおいても、中長期的な目線というよりも、今期どれだけ売上に貢献できるか?といった短期的な目線で評価をされてしまう傾向があります。
そうすると、当然売上に繋がるような案件を創出して営業にトスすることが求められ、リードジェネレーションやリードナーチャリングを行い、案件創出を目指した活動をしているようでいて、実際には適切なリードナーチャリング行われずに、リードジェネレーションに終始してしまっているといった企業も少なくありません。そうすると活動指標としては、その前段としてのリード獲得数となってしまうのです。

本来は、市場での認知向上や製品・サービスの理解促進、課題認識の喚起、そして課題解決の重要性の理解促進なども含めて、さまざまな観点での施策設計が必要です。また、これらを実際に実行するとなると相応のコンテンツが必要になるため、コンテンツ投資を考慮した上で計画を立てる必要があります。 しかし、多くの企業ではこれらの観点が欠如しており、リード獲得数だけをフォーカスしている傾向にあります。そうすると、表面的なリード数は増加はしますが、中長期的な関係構築を行うことは難しくなります。

また、リード獲得数を重視するあまり、潜在層や顕在層、ターゲットや非ターゲットなどの区分けが意識されていないこともあります。本来は、すべてのリードに等しく価値があるわけではなく、リードの質を評価し、適切なフォローアップを行うことが重要です。しかし、現状ではリードの数に目が向けられているため、リードの質や分類が軽視される傾向にあります。これにより、マーケティング活動が非効率になり、真に価値のあるリードを見逃すケースもあります。 こういったことが繰り返されることで、徐々に施策の打ち手も成果までもが頭打ちになり、手応えの無いまま施策を打ち続ける企業も少なくないのです。

施策先行を打開するためには

ここまでの内容を踏まえた時、どのような手順でプロモーション施策の設計を進めていくのが良いのでしょうか? それはやはり、「誰に、何を、どのように」という基本的な順序に立ち返って設計する必要があります。具体的に、次のような手順を提案します。

  • 市場理解の強化:まず基本的なことですが、ターゲット市場の深い理解が不可欠です。市場調査やデータ分析を通じて、市場の動向、競合状況、業界トレンドなどを把握することが求められます。
  • ターゲティング:具体的な顧客層を設定し、そのニーズや特性を理解することで、精度の高いプロモーションが可能になります。ターゲットセグメンテーションを行い、それぞれのセグメントに対して適切なアプローチを検討します。
  • ペルソナ/カスタマージャーニー設定:ペルソナ設定とカスタマージャーニーの設計により、顧客がどのようなプロセスを経て購買に至るかを理解し、各段階で適切なコンテンツやメッセージを提供します。
  • プロモーション目的の設定:現状を整理た上で、明確なプロモーション目的を設定します。マーケティング活動の方向性を定め、短期的なリード獲得と長期的な関係構築を両立するための具体的な施策を策定します。
  • 評価指標の見直し:リード獲得数だけに依存するのではなく、プロモーション目的に応じた多角的な評価指標を取り入れ、短期的な成果だけでなく、長期的なビジネス成長を促進します。
  • コンテンツ企画:質の高いコンテンツを制作し、ターゲット顧客に価値のある情報を提供します。ホワイトペーパー、ブログ、ウェビナーなどを活用し、顧客とのエンゲージメントを深めます。
  • プロモーションチャネル選定:適切なチャネルを選び、最適なタイミングでコンテンツを配信します。ターゲット顧客のタッチポイントとなるチャネルを選択することが重要です。

BtoBマーケティングにおけるプロモーション活動では、短期的な成果を求めて施策が先行しがちです。しかし、効果的なマーケティングを実現するためには、市場理解と顧客理解を深め、明確なターゲティングとペルソナ設定、そして一貫したコンテンツ戦略と適切なチャネル選定を行うことで、短期的な成果だけでなく、長期的な関係構築を目指すことが重要です。

リード獲得数だけに依存せず、マーケティングの機能や意義を再認識し、多角的な評価指標を取り入れ、質の高いリード育成を行うことで、ビジネスの持続的な成長を実現しましょう。

この記事を書いた人

安川 俊大株式会社エムエム総研

エムエム総研のカスタマーエクスペリエンスDivのDivision Managerとして、BtoBマーケティングに特化したサービスを提供。前職のSIerでは事業責任者、営業・マーケティングを統括し、セールステック領域のビジネス拡大に貢献。また、SaaSベンダーでは、SFAの導入コンサルタントとして多くの企業のSFA導入と運用支援に携わり、営業プロセスの構築をサポートした実績多数。

関連サービスRelated Services

プランニング

プランニング

成果の最大化に向けた包括的なプランをご提案します。まず、徹底した現状認識と課題分析からスタートし、確かな顧客理解に基づく購買プロセスに沿った全体設計、そして具体的なアクションプランの立案・実行までをワンストップで支援します。

  • マーケティングリサーチ
  • STP
  • ペルソナ
  • カスタマージャーニー