Column
BtoBマーケティングのWebサイトにおける評価項目について
2024.12.02
2024.12.02
こんな人におすすめ
- Webサイトの構築に関わっているが、専門的な知識が無く不安がある
- Webサイトの構築にあたって、制作会社との進め方に不安がある
昨今のBtoBマーケティングでは、Web広告の運用やLPの活用によるリード獲得、そしてオンラインセミナーの開催など、Web上の施策を中心に行われています。こうした流れの中で、マーケティング部門は数多くのWebサイトを構築する必要に迫られています。一方で、Webサイトを構築するにあたり「社内でWebデザインのレビューを行いたいものの、どのような観点から評価をすれば良いのかわからない…」といった課題に直面しているマーケターも少なくないようです。
Webサイトを評価するにあたり、「見当はずれのフィードバックをしてしまうと、デザインの良さを潰してしまうのではないか?」といった懸念や「個人の主観に偏ってしまい、狙った効果が期待できない修正依頼をしてしまうのではないか?」といった不安の相談が寄せられることもあります。
また、Webサイトの構築は複数人のチームで行うために、「メンバーそれぞれから違った視点の修正点を指摘され、全て反映させると煩雑なデザインになってしまう」という悩みも生まれるでしょう。
では、構築するWebサイトのデザインを、より良くブラッシュアップするためには、どのような観点を持つべきなのでしょうか?
デザインが企業のブランドのガイドラインに即しているかどうか?
BtoBマーケティングでWebサイトを構築する際には、企業ブランドのガイドラインに即しているかが重要です。「見栄えが良い」ということはもちろん重要ですが、各々の感性に大きく依存してしまう可能性のある部分について最初に評価してしまうと、評価にかかる時間が長くなってしまったり、企業の持つブランドイメージから逸脱してしまったりという懸念があります。
Webサイトの評価を円滑かつ精度を高く行うためには、マーケターが正しくブランドガイドラインの内容と“その背景”を理解したうえで、評価を始めることが重要です。
まずはブランドガイドラインの基本である
- ロゴの使い方(スペースの取り方などが守られているか)
- 指定されたタイポグラフィ(フォント)が使用されているか
- ブランドカラーをベースにデザインされているか(ブランドイメージとかけ離れたカラー使用は、「あえてそうする」場合以外は一貫性担保の為に避ける)
- といった基本的なポイントをチェックします。
ブランドガイドラインのチェックは、一見作業的に感じてしまいますが大きなメリットがあります。ブランドガイドラインを遵守することで、顧客とのコミュニケーションに一貫性を持たせ、サービスに対する印象やアイデンティティを形作り、競合と比較された場合に、個性を持たせることが出来るのです。
コミュニケーションに一貫性を担保することで、受け手に予測可能なイメージを提供する事が可能となります。例えば、ある企業(しっかりした安心感を持たれている企業)のサービス導入を検討する際に、デザインがその企業のブランドイメージと違ったものである場合、企業の信頼がサービスの印象と結びつかず、サービス導入後のイメージが作りにくい状況に繋がってしまうでしょう。ブランドガイドラインに即したデザインは、ユーザーとのコミュニケーションにスピードと安心感をもたらすのです。
これをガイドライン無しで行うならば、膨大な時間がかかってしまうでしょう。そのために、Webサイトではロゴ、色、フォント、レイアウト、トーンなどのビジュアルや言語的な要素を統一します。
リブランディングなど「既存のイメージからの脱却」を狙ってブランドガイドラインを逸脱する際はこの限りではありませんが、こうしたイレギュラーなWebサイト構築は、ブランドガイドラインの持つスピード感といった恩恵を受けられません。広報部門などの関係各所と事前に協議し、足並みをそろえてプロジェクトを進める必要があるでしょう。
アクセシビリティに配慮されたデザインになっているか?
つぎに検討すべき項目として、アクセシビリティの確保があります。アクセシビリティとはつまり「誰でも情報を入手できるWebサイトであること」で、デジタル庁からも積極的にウェブアクセシビリティの導入について情報発信がされています。
2024年11月現在、ウェブアクセシビリティの導入は法による義務化まではされていませんが、アクセシビリティを向上することは、Webサイトに訪問する多くのユーザーにとってメリットが大きいため積極的に検討すべきでしょう。
アクセシビリティの向上ですぐに取り組めるのは視覚的コントラストの設計です。Webサイトにはアクセシビリティに問題が出ないように基準のコントラスト比の基準があります。コントラスト比は背景色と文字色・画像色を比較した際の明るさ(輝度)の差で、数値で表わされます。
例えば、背景が黒、文字色が白の場合は、真逆の色で構成されており、「21:1」という数字で表されます。これは文字が非常に見やすく「高コントラスト」と呼ばれる状態です。逆に背景が薄いグレー、文字色が白の場合は明るさの差が少なく、文字が見えにくい「低コントラスト」状態になります。(なお、まったくコントラストがない同色の場合は、「1:1」という数字で表されます)
“読みやすさ”という視点で考えると、低コントラストは好ましくありません。一般的な方でも読みにくさを感じる方は少なくありませんが、特に高齢の方や視覚障害を患われている方は「文字が読めない」という状況になってしまいます。
国際基準「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」にて推奨される基準では、コントラスト比が「4.5:1」とされています。ただし、WCAGの基準は努力義務であり、一般的な企業ではコントラスト比を「3:1」以上と定めているケースが多くありますので、この数値を参考にしていただいても良いかもしれません。
また、低コントラストのデザインには独特のクールな印象を持たれやすく、印象と読みやすさのバランスを考えながらデザインを評価する必要があります。
しかし、こうした基準を把握しておくことで、評価者の年齢層などに左右されず、ユーザーフレンドリーなWebサイトの構築に近付くことが可能です。
目的を意識したデザインになっているか?
最後に、BtoBマーケティングにおけるWebサイトでは、ビジネス上の目標があるということを念頭に置いたチェックです。
Webサイトを制作するにあたって、
「どのようなユーザー」に
「どのような情報を提供」し
「どのような印象を受ける」
または
「どのようなアクションを起こしてもらう」
かを設計する事は最も重要です。
これはWebサイトの“目的”にあたる部分ですが、構築しているWebサイトがこの目的を達成するための要素として成立しているか、を判断する必要があります。もちろんこれらの要素はビジュアル的な要素だけでは達成できません。サイト構成、情報設計、コピーライティングを含めて総合的に判断する必要があります。
判断すべき項目が多く、これを複数名で行うのですから、評価基準を明文化しておくことも評価の精度を高めるためには必要でしょう。例えば、
1. こちらの期待通りの理解を進められるように必要な要素が強調されているか
2. 要素がきちんと整理されているか(スペースが少なくごちゃごちゃしている、文字が小さいなど読みにくい、等)
3. サイトはコンセプトに則って制作されているか
4. ターゲットユーザーが好感を持てる(信頼を持てる)雰囲気になっているか
5. 競合のWebサイトと比較した際に、きちんと差を感じられる雰囲気になっているか
こうした項目を評価者全員で共有したうえで確認します。特に上記の4と5に関しては、コンセプトがきちんと設計出来ているかが重要です。策定したコンセプトをベースにすることで、判断する事が曖昧になりにくくなるでしょう。
これらの確認内容は感覚的な内容も含まれているため、一人で行うよりも、複数人で意見を出し合い、より多くの人に納得感のあるフィードバックを採用するとデザインの精度が上がるでしょう。