Column
BtoBマーケターが抱える
クリエイティブの課題を考える【後編】
- クリエイティブ
2025.12.15
2025.12.15
こんな人におすすめ
- コンテンツの良し悪しが判断できない
- コンテンツに詰め込む情報量が判断できない
- 効率的なコンテンツ発注ができていない
前回のコラム「BtoBマーケターが抱えるクリエイティブの課題を考える【前編】」では、BtoBマーケターが抱えるクリエイティブの課題を整理したうえで、クリエイティブに対するマーケターの役割について考察しました。また、クリエイティブとは「伝える力」を高めるためのものであり、「伝える」を分解して捉えたときに、マーケターはクリエイティブに対してどのような役割を担うべきなのかも考えました。
今回のコラムでは、実際にBtoBマーケターがクリエイティブに関連する業務において、どのように立ち回っていくべきなのかを具体的に掘り下げて考えていきます。
クリエイターの役割や欲する情報を把握する
言うまでもなくクリエイターは万能な装置ではありません。与えられた要件をもとに、適正な手順を踏んで成果物を作っています。もちろんクリエイターのスキルが不足している場合もありますが、スキルが十分であっても発注者とクリエイター双方にとって不本意な成果物が仕上がってしまうことがあります。
ではなぜ、そのようなことが起こってしまうのでしょうか?まずはクリエイターの役割や、欲している情報について考えてみましょう。
クリエイターが制作過程でやるべきことは次のように3つの段階に分けられます。
ひとつ目の段階では、ターゲットと市場を理解します。そして市場における競合他社の表現的な動向を把握した上で、どのようにすれば認知や興味喚起を得られるか?をコンセプトに落とし込んでいきます。ここで重要なのは、あくまでもターゲットと市場を“理解”することであり、“設定”するのでは無いということです。そしてターゲット理解や市場理解に関する感度は、当然マーケターに及ばないため、マーケターから与えられる情報が土台になって制作が進んでいくことになります。
次の段階では、施策の目指すゴールを叶えるために、伝える内容の中身・順番・強弱(量)を整理し、「伝わりやすく、迷わせない構成」に組み立て直します。この段階はでは、取材やヒアリングで情報を収集し、どのくらいの難易度なら伝わりやすいか?どのくらいの深さなら理解してくれるのか?といったコンテンツのボリュームや情報の解像度を詰めていきますが、その判断は「施策の目指すゴール」と前の段階で得た「ターゲット像」が拠り所になります。
そして最後の段階では、情報を視覚・言語・構造へと翻訳し、「見てわかる」だけでなく、「心に届く」表現へと最適化していきます。
このような段階を経てクリエイターは成果物を制作していきますが、これらは全て、「狙うべきターゲット」と「目指すべきゴール」という施策の大きな枠組みの中で行われています。クリエイターが独自にターゲットを変更したり新たに設定することはできませんし、ゴールを勝手に変えることもできません。クリエイターが成果物を作るうえで最も欲しているのは「高解像度のターゲット像」と「明確なゴール」と言った普遍の枠組みということになります。
そんなことは当たり前だと思う方もいるかもしれませんが、制作過程でこの枠組みが変化することは意外と頻発しているのです。具体的に現場ではどのようなことが起きているのでしょうか?
マーケターとクリエイターの間で実際に起きている失敗例
実際に起きている失敗の中でもよくあるパターンとして、成果物の社内レビューの際に新たな意見が出ることで手戻りが多発してしまうといったものがあります。これは、制作工程が長期化するだけでなく、思ったような成果物に仕上がらなかった。という悲惨な結果に繋がってしまうことも多く、できるだけ避けたい失敗です。
例えば、製品開発部門から「新たな機能や特筆すべき機能は他にもある」といった指摘が入ったり、営業部門から「担当しているリードには、別の訴求ポイントの方が伝わるので変更してほしい」といった要求がくることが考えられます。
この時に最も重要なのが、施策単位の「高解像度のターゲット像」と「明確なゴール」です。社内レビューの際には必ず施策のターゲットとゴールを丁寧に説明することで、新たに湧き起こる指摘や要求が適切なものなのかを建設的に議論することができます。時には施策の目的を逸脱した思惑に対して厳正に対処することも必要でしょう。
他にも、頻繁に見受けられる失敗例として「具体的な成果物のイメージを先行して伝えてしまう」というものがあります。例えば、他社のコンテンツを見せて「こんな感じに仕上げて欲しい」といった発注であったり、「色やフォントはこんな感じにして欲しい」といったデザイン上の指示を先行して行っているパターンです。
こうした発注や指示では、制作側は全く同じものを作る訳にもいきませんし、見た目に囚われるあまりクリエイターは自身の持つクリエイティブメソッドを発揮することができなくなってしまいます。
このパターンは経験の浅いマーケターが、どのように発注して良いか分からない場合に陥りがちですが、経験豊富なマーケターでも何らかの直感が働いて陥ってしまう場合があります。こうした場合、経験豊富なマーケターが直感的に良いと思ったクリエイティブには必ず理由があるはずなので、「なぜ他社のコンテンツが良いと思ったのか?」「なぜ、そうした色味やフォントが良いと思ったのか?」と言った理由も併せて伝えることで、クリエイターの発展的なアイデアを引き出すことにも繋がります。
マーケターはクリエイティブに対してどのように立ち回るべきか?
クリエイターが優れたクリエイティブを構築していくために最も必要なのは「高解像度のターゲット像」と「明確なゴール」です。そして、これらはマーケターからしか与えることはできません。マーケターは従来通り、施策のターゲットとゴールを明確にし、途中でブレずに進行しているかを管理していくべきなのです。
優れたクリエイティブにとってマーケティング的知見から得られる情報は無くてはならないものです。マーケターは既存のスキルや知識だけでも十分にクリエイティブに対して貢献することができます。
私たちマーケターは、クリエイティブに対する無用な苦手意識を捨て、マーケターとしての知見を活かしてクリエイティブを支え導いていくべきでしょう。