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PMFだけでは事業は動かない。
実務を前に進めるのは"Gapを見る"という視点

  • プランニング

2026.04.20

2026.04.20

こんな人におすすめ

  • PMFという言葉は理解しているが、実務でどう使えばよいかしっくりきていない方
  • 事業開発やプロダクト改善の議論が抽象的になりがちな方
  • 「PMFしているかどうか」ではなく、次の打ち手につながる整理をしたい方
  • 継続率や有料転換率の改善を、より解像度高く進めたい方
  • 市場とのズレを見つけながら、改善サイクルを回す考え方を整理したい方

PMFは、事業づくりにおいて重要な考え方です。市場に受け入れられるプロダクトをつくることは、どの事業にとっても避けて通れない課題だからです。

一方で、実務の現場では、PMFという言葉だけでは議論が前に進みにくいことがあります。「PMFを達成しているのか」「まだしていないのか」といった問いは象徴的ではあるものの、日々の改善活動にそのままつながるとは限りません。

むしろ現場で必要なのは、いま市場とのあいだにどのようなズレがあるのかを見つけ、そのズレを埋めていく視点ではないでしょうか。本稿では、PMFの価値を前提に置いたうえで、実務上の限界と、それを補う視点について考えてみます。

PMFは重要ですが、実務では扱いにくいことがある

PMFが重要であることに異論はありません。一定の顧客に対して価値のあるプロダクトを届け、市場から継続的に受け入れられる状態をつくることは、事業の成立条件そのものと言ってよいでしょう。

ただ、その「Fit」とは何かを実務で定義しようとすると、途端に難しくなります。

どの顧客に対して、どの課題が、どの程度満たされていればFitなのか。この問いに答えようとすると、前提条件は一気に増えていきます。

たとえば、どのセグメントを対象とするのか。顧客課題をどう設定するのか。競争環境はどうなっているのか。自社のポジショニングはどこにあるのか。価格帯、導入ハードル、継続率の水準をどう見るのか。

何をもってFitとみなすかは、こうした条件に大きく左右されます。しかも厄介なのは、それらが固定されたものではないという点です。市場は変化し、競合は動き、顧客の期待値も変わります。つまり、一度定義したFitは、時間の経過とともに簡単に揺らいでしまいます。

このため、PMFは概念としては強力であっても、実務上の共通言語としては扱いが難しい面があります。理念としては正しくても、現場で運用しようとすると、「自分たちはいま本当にFitしているのか」が曖昧になりやすいからです。

そして、その曖昧さはときに思考停止を招きます。「PMFしているのか、していないのか」という大きな問いだけが残り、次に何を見ればよいのか、何を直せばよいのかが見えにくくなるのです。

重要なのは、FitではなくGapを見ること

こうしたときに有効なのが、Gapを見ることです。それをたとえば「Product-Market Gap」とでも表現できます。ここで言うGapとは、プロダクトと市場のあいだにどのようなズレがあるのかを捉える考え方です。

Fitが状態を表す言葉だとすれば、Gapは差分を表す言葉です。状態を定義するのは難しくても、差分を見つけることは比較的やりやすいものです。理想と現状のあいだにどのようなズレがあるのか、と問うだけで、議論はかなり具体的になります。

もちろん、これはまったく新しい理論ではありません。やっていることの本質は、仮説を立てて検証し、改善を重ねるという、ごく基本的な実務そのものです。ここで提案したいのは、新しいフレームワークを増やすことではありません。問いの立て方を少し変えることで、現場の議論を前に進めやすくするという発想です。

「自分たちはFitしているか」と問うのではなく、「いまどこにGapがあるか」と問う。

それだけで、会議で議論される内容も、チームが次に取るアクションも、大きく変わってきます。

Gapで考えると、改善の論点が分解できる

実務の場面で考えると、この違いはよりわかりやすくなります。

たとえば、STPやペルソナを設計し、一定の訴求や導線を整えたあとに見るべきなのは、「自社はFitしているか」という抽象的な判定ではありません。むしろ必要なのは、「市場とのあいだにどのようなズレが残っているか」を具体的に見ていくことです。

訴求が刺さっていないのか。初回体験で離脱しているのか。継続利用につながっていないのか。価格と認知価値のあいだに開きがあるのか。営業が伝えている価値と、顧客が実際に受け取っている価値に差があるのか。

こうした問いは、すべてGapとして整理できます。そして、Gapとして把握できれば、仮説が立ち、優先順位がつき、改善施策にも落とし込みやすくなります。

つまり、PMGは戦略概念というより、運用概念として強みがあります。STP、ペルソナ、カスタマージャーニー、オンボーディング、継続率改善といった日々の実務と、そのまま接続しやすいからです。

たとえば、有料転換率が伸び悩むBtoB SaaSではどうか?

具体例として、あるBtoB SaaSで、トライアルからの有料転換率が伸び悩んでいるケースを考えてみます。

この状況をPMFの枠組みで見ると、「まだFitしていない」「Fitの途上にある」といった大きな評価になりやすいです。もちろん、それ自体は間違いではありません。ただ、その整理だけでは、現場が次に何をすべきかまでは見えてこないことが多いです。

一方、Gapを見る視点で捉えると、論点はもう少し分解できます。

たとえば、トライアル期間中に価値を体感できるまでの導線にGapがあるのかもしれません。あるいは、想定していたペルソナと、実際に流入しているユーザー属性のあいだにGapがあるのかもしれません。ユーザーリテラシーによってはオーバースペックである可能性もあります。機能自体には一定の評価があっても、価格帯と顧客の予算感にGapが残っている可能性もあります。

このように問いを立て直すと、見るべきデータも変わってきます。単に有料転換率を見るだけではなく、初期設定を完了できた人の割合や、主要機能まで使った人の割合、ユーザー属性ごとの転換率、なぜ受注できなかったのか、どの競合に負けたのかまで把握できると、改善点をより具体的に特定しやすくなります。特にトライアルでは、誰が評価主体となっているのかを見極めることが重要です。情シスが評価を主導し、本来の利用者が十分に使わないまま導入判断がなされる場合もあるため、定量指標だけでなく、定性ヒアリングを通じて評価プロセスを補足的に把握することが有効です。

本当に注意すべきなのは、「Fitしているように見える状態」

Gapという視点が特に重要になるのは、何かが明確にうまくいっていない場面だけではありません。むしろ注意すべきなのは、一見するとFitしているように見える状態のほうです。

とりわけ新興市場では、この問題が起こりやすいです。市場自体がまだ未成熟で、顧客像が十分に言語化されておらず、比較対象となる選択肢も少ないからです。そうした状況では、一定の利用継続が見られたとしても、それが深い意味での適合を意味しているとは限りません。

たとえば、似たようなサービスしか存在しない市場では、「強く支持されているから継続されている」というより、「とりあえず使い始め、そのまま使われている」という状態が起こりえます。また、SMB向けの選択肢が限られている領域では、価格と機能のバランスから消去法的に選ばれているだけ、というケースも少なくありません。

そこにあるのは、必ずしも明確な選好ではありません。「他にちょうどよい選択肢がない」「乗り換える理由がまだ弱い」「今のところはこれが最もましだ」。そうした消極的な継続である可能性もあります。

もしそうだとすれば、利用継続や定着といった表面的な数字だけを見て、「Fitしている」と判断するのは危うい可能性があります。見かけ上は受け入れられているように見えても、実際には多くのGapが残されたままかもしれないからです。

競争が激しくなり、よりよい選択肢が現れたとき、そうした見かけ上のFitは簡単に崩れます。だからこそ、重要なのはFitらしき状態に安心することではなく、顧客がなぜ選んでいるのか、なぜ使い続けているのか、その背景にある妥協や未充足を丁寧に見にいくことです。

PMFは節目を測る概念であり、PMGは日々を動かす概念

もちろん、こうした議論はPMFの価値を否定するものではありません。PMFは依然として、事業の節目を見極めるうえで重要な概念です。

一定の顧客群に対して価値が成立しているか。継続的な需要があるか。再現性が見え始めているか。こうした大きな確認の場面では、PMFという考え方は有効に機能します。

ただし、その役割は日々の運用とは少し異なります。PMFは節目を評価する概念であり、PMGは日々の改善を進める概念として捉えたほうが、実務にはなじみやすいです。

ゴールとしてPMFを置きながら、運用はPMGで回す。この役割分担のほうが、現場で起きていることをより素直に説明できるのではないでしょうか。

事業を前に進めるのは、Gapを見つけ続ける力

変化の速い市場では、「Fitしたかどうか」を一度判定して終わることに、あまり大きな意味はありません。重要なのは、前提条件が変わるたびに、どこに新たなGapが生まれたのかをすばやく把握し、それを埋めるための改善を続けることです。

そう考えると、強い企業とは、一度PMFに到達した企業というより、市場とのGapを見つけ、埋め、また見つけて埋めることを繰り返せる企業だと言えるかもしれません。

PMGという言葉をあえて使ってきましたが、突き詰めれば、やっていることは地道な改善活動そのものです。少し身も蓋もない言い方になりますが、事業を前に進めるのは、結局いつも、そうした営みの積み重ねです。

だからこそ、もしPMFという言葉が現場では少し大きすぎると感じるなら、問いをひとつ変えてみるとよいでしょう。

「自分たちはFitしているか」ではなく、「いま、どこにGapがあるのか」と。

その問いのほうが、次の一手に近いはずです。

ちなみに、この話を「うちのプロダクトにはあまり関係ない」と思った方へ。3年前に決めたターゲット、更新されていないペルソナ、誰も疑わないバリュープロポジション——PMFという言葉を使っていないだけで、あなたのチームにも「Fitしたことにして放置されているもの」はないでしょうか。

そして、もしそのGapに気づいたとしたら、それは失敗ではありません。学習の起点です。問題なのはGapがあることではなく、誰もそれを見に行かないこと、見つけても指摘しないことのほうです。

この記事を書いた人

安川 俊大株式会社エムエム総研

エムエム総研のカスタマーエクスペリエンスDivのDivision Managerとして、BtoBマーケティングに特化したサービスを提供。前職のSIerでは事業責任者、営業・マーケティングを統括し、セールステック領域のビジネス拡大に貢献。また、SaaSベンダーでは、SFAの導入コンサルタントとして多くの企業のSFA導入と運用支援に携わり、営業プロセスの構築をサポートした実績多数。

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